Facebook は Libra と呼ばれる独自の仮想通貨を立ち上げると発表しましたが、今の時点で Facebook はどの程度信用できるでしょうか?
この大企業に対して、あえてこの質問をぶつけてみたいと思います。うやむやなまま放っておくこともできますが、Facebook に正当な批判を試みるべきだと思いました。結局のところ、20億人以上のユーザーがいるわけですから。
Facebook は、世界のあらゆる問題がオープンフォーラムで議論される場であり、知識人やそう認められたがっている人たちが最新の重大なトピックに関して議論を戦わせることができます。(Facebook に批判的なのに使っているのかと懐疑的な人たちのために説明するなら)私は Facebook を、VoIP や電子メールなど他の方法ではうまく連絡ができない国にいる人たちと連絡を取り合うためだけに使用しています(私は、香港/中国に拠点を置いています)。Facebook が2020年に独自の仮想通貨を立ち上げることが確認されましたが、これは、2017年以来取り沙汰されていたことであり、大きな驚きではありませんでした。
Facebook は広告の巨人であり、ほとんどの収益をこの活動から得ています。Facebook の、プライバシーをないがしろにする姿勢は大西洋をまたいで両側から罰金を言い渡されるに至り、連邦取引委員会からの罰金は世界記録となっています。ところがこの和解では、Facebook は不正行為を容認する必要もなく、2019年6月12日までのすべての申し立てに対して免責されるような形となっているようです。問題になっている Facebook のアクションには、開発者にユーザー間の個人的なメッセージへのアクセスを許容していること、ビュー数に関して広告主に誤った理解を招きかねないこと、ユーザーのパスワードを保護できていないことが含まれます。Facebook は、ユーザーだけでなく、顧客である広告主にも不利益を与えているわけです。
罰金は、巨額であるとは言え、Facebook の1年間の収益の10%にも満たず、ダメージを与えるほどではありません。他地域でも同様の動きがあって然るべきでしょう。EU が将来、制裁金を減額する方向に向かうとは思えませんが、Facebook のような会社が新しい「グローバル」通貨の流通を主導することは好ましいでしょうか?
ダメージコントロールは必要です。Facebook が仮想通貨を管理するという話には、胡散臭さを感じてしまいます。
私は経済学者でもなく、単なる推測の域を出ませんが、Facebook は単独では仮想通貨プロジェクトを敢行することはできないはずです。単独では誰も採用せず、規制当局も許さないでしょう。彼らは、古代ローマ人が試みたような、世界的支配への方略を模索しているように見えます。ローマ帝国も中国には到達できませんでしたが、Libra という通貨名は古代ローマで使われていた ”as” と呼ばれる硬貨の同等物である重さの単位と同じです。
通貨名の由来をフランス語で free を意味する “libre” だと推測する人もいます。占星術で使われる星座名、Libra (天秤座) から来ているとするのが一番単純な発想ですが、この記号が、安定性、バランス、合理性、そして誰も Facebook の特性とは考えないようなその他の資質を示しているのは、ある意味で論理的な進歩ということなのかもしれません。
中国には、モバイル決済を含む独自のソリューション、Alipay と WeChat があるので、Facebook が中国市場に参入することはおそらく難しいでしょう。Facebook の市場が飽和点に達したように思われる今、新たな収益増の手段として、支払い市場を「開拓」してみようと模索しているのではないでしょうか。
新しい非営利団体である Libra 協会の運営拠点にはスイスが選択されました。TechCrunch の記事によると、スイスは中立国であり、金融革新を強力にサポートしているからです。
スイスは厳格なデータプライバシー規制を有しており、政府や法執行機関によるデータへの即時アクセスを禁止しています。私はこれがスイスが Libra 協会の拠点に選択された理由だと思います。ProtonMail も、まさしくこの理由(政府や法執行機関によるデータへの即時アクセス禁止)のためにスイスでホストされています。データへのアクセスを要求するにはその根拠を示す必要があり、しかも許可が与えられるまでに何年もかかる可能性があります。なるほど、と思いませんか?
ここでちょっとまとめてみましょう。Facebook はこのアイデア(多国籍通貨のアイデアは新しいものではありませんが)を思いつき、Libra 協会の創設メンバーとして開発作業を(Libra 協会のパートナーと共同で)行いました。各創設メンバーは、最低1,000万ドルを投資するか、新しい市場(銀行口座なし、または金融システム外)をターゲットとする手段を提供する必要があります。
社会的にいいことであるという見せかけの下に、「10億人が携帯電話を持ち、5億人がインターネットにアクセスできるにもかかわらず、従来の銀行を利用できない17億人の成人」を取り込むことができる新しい潜在市場が生まれることになります。そして、誰もが、必要に応じて無料の(または非常に安い)通貨取引を行います。
ちょっとシニカルな表現になっているでしょうか?Facebook は、さまざまな創設メンバーを惹きつけており、競合であっても基準を満たせば参加できます。Libra 協会のホワイトペーパーが公開されていますので、誰でも読むことができます。行間を読むようにしてください。
プロセス(構想から最終的なロールアウトまで)は次のような構成になっているように読み取れます(これらに限定されるものではありません)。
非営利慈善団体や関連するマイクロファイナンス・ソリューションを提供する組織などに参加してもらうことは有意義であり、そのような組織は創設メンバーになるのに支払いをする必要はなかったはずだと想定しています。求められる、銀行アカウントを持たない人たちから成る潜在市場にアクセスを提供するのはこういった組織です。彼らは利用されているのでしょうか?
そうかもしれません。しかし、すべての創設メンバーは、有形通貨準備から生じる利息からの配当の形で「利益」を共有します。Libra 協会は、社会にプラスの影響を与えるという観点からプロジェクトへの参加資格に値する資金を承認することができるため、新しい仮想通貨はこのメリットを提供できる可能性があります。
ユーザーが安価で転送できるグローバル通貨のアイデアは価値がありますが、ブロックチェーンを分散化して仮名を許容すると、グローバル企業(創設メンバー)が自己目的のために財務データを利用できる状況が生まれます。このようなものが一般的に受け入れられるには、実際の銀行が協力することが必要になるのではないでしょうか。仮想通貨を導入しなくても、Payoneer や TransferWise などのサービスを使用すれば、通貨の転送にかかる費用を節約できます。
正直な私の感想は、たとえ他のすべてが完璧であったとしても、Facebook が関与しているという事実だけで Libra には悪いイメージがついてまわります。汚名返上にはダメージコントロールが必要で、大規模なPRが行われているようです。
Facebook の CEO がいくら「私がこのプロジェクトを推進しているのではありませんよ...」と主張しても、Libra 協会のホワイトペーパーに「プライバシー」という言葉が欠けているという事実(訳者注:1箇所だけありますが)は隠せません。Facebook が大勢の若者に無料アクセスを提供したら、それについて考える必要があるように思います。また、この活動で「プライバシーを第一に」をモットーとしているような企業や銀行は見当たりません。さらに、Libra 協会には資金の利息が入ります。
世界規模で高い採用率が達成されると、非営利団体にとって大きな収入になります。歓迎すべきものでしょうか、それとも引き出すときにレートが膨らみ何らかのコストも追加されるような仕組みで収益を得ようとする別のスキームと考えるべきでしょうか? Libra プロジェクトは複数の国で精査されているようです。
An Irishman based in Hong Kong, Michael O’Dwyer is a business & technology journalist, independent consultant and writer who specializes in writing for enterprise, small business and IT audiences. With 20+ years of experience in everything from IT and electronic component-level failure analysis to process improvement and supply chains (and an in-depth knowledge of Klingon,) Michael is a sought-after writer whose quality sources, deep research and quirky sense of humor ensures he’s welcome in high-profile publications such as The Street and Fortune 100 IT portals.
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