エンタープライズ規模のデータアーキテクチャや情報管理に取り組んだことがある人なら、その大変さをご存知でしょう。これにはかなりの時間がかかります。
新しい形式のデータやデータソースが登場するたび、システムの改修が必要です。また特定のデータ要素の解釈方法が新しくなったら、改修が必要になります。解釈の変更により、それに基づくアクションが変わる場合も、改修が必要です。
個々の改修自体は、それほど難しくはないでしょう。しかし多数の変更間の調整は非常に困難になります。
このため、これには長い時間と非常に高い費用がかかります。しかし自分の家の電気配線を変えるのとは違って、データアーキテクチャの改修は永遠に繰り返されるのです。
今更ですが、デジタル時代において、常に変化し続けることは当たり前であり、新しいデータ、新しい解釈、新しいアクションに対して、アジャイルな対応が求められるのです。いくつかの面でアジャイルな組織はたくさんありますが、「ファクトとその意味」に関してアジャイルな組織はほとんどありません。
それでは望ましい状態とは何でしょうか。それは「データとその意味に対してアジャイルである」ということです。
「データアジリティ」とは、情報の解釈方法およびそれに基づくアクションを、シンプルでパワフルに、かつ即座に変えられる能力のことです。
データアジリティは、あらゆるデジタルビジネスモデルにおいて重要です。物理的なビジネスにおいてサプライチェーン、製造、流通にアジリティが求められるのと同様、デジタルビジネスでもアジリティが求められます。
この理由は簡単です。これはファクトおよびその意味が変わっていくからです。そして多くの場合、そのような変化はあっという間に起こります。優れた組織が、ファクトや意味の急激な変化に足元をすくわれた例はいくらでもあります。
例えば、「ロシア投資」という概念は、今では少し前と全く意味が変わってしまっています。
リスク管理では、常にデータアジリティが求められます。
ライフサイエンスでは、世界的な感染症の大流行のような新たな情報や健康への懸念が発生した場合、取り組むべき対象を素早く切り替える必要があります。
情報機関では、情報漏えいなどの新たな事態が発生した場合、迅速に情報セキュリティ態勢を再構築する必要があります。
もっと具体的に見ていくと、考慮すべき事項がたくさん見えてきます。例えば新製品の市場投入時間の短縮、顧客への特別な対応、リスク管理の改善などがあります。これらのいずれにおいてもデータアジリティが求められます。
データおよびそれについて知っているすべてを一緒に、格納、共有、管理、保護できる優れた方法がなければ、多くの人にとってデータアジリティは捉えどころのない目標であり続けるでしょう。
ここで多くの組織は、3つの分野に投資することになります。
1つめは「データレイヤー」です。通常これには複数の社内システムが含まれます。ここではきめ細かいレベルで物事が処理されます。
2つめは「統合レイヤー」です。ここでは、ワークフローだけでなくレポーティングに関して、バラバラなものまとめます。
3つめは「解釈レイヤー」です。これは、知識、ガイドライン、辞書、オントロジー、ナレッジグラフなどから構成されており、特定のコンテキストにおけるデータの意味の解釈に利用されます。
ここでの問題点ははっきりしています。つまりこういった投資は互いに断絶しているのです。ファクトがある場所と、その意味がある場所は別です(意味は人々の頭の中にあるかもしれません)。
このようなやり方では、決してアジャイルにはなりません。
「データ」(デジタルファクト)と「データについて知っていること」(コード化されたメタデータ)、そして「ファクトが意味すること」(セマンティック解釈)を緊密に統合することで、データアジリティが生まれます。
データアジリティは、アクティブなデータ、アクティブなメタデータ、そしてアクティブな意味を結びつけることで生まれます。
エンタープライズデータに関してどの課題に取り組んできたかにもよりますが、その変革による結果は、魔法のようなものとなるでしょう。「魔法」じゃないとしたら「変革的」「革新的」「ゲームチェンジャー」といった言葉を使わないかぎり、これを正確に表現することは難しいでしょう。
本質的な課題が取り除かれたことで、新しいことが可能になります。
理想的なユースケースとしては、(a)賢い人々が、複雑なデータを解釈して意思決定をする、(b)組織的知識をあらゆる場所で使用し、更新し、コンプライアンスに準拠する、(c)その両方の組み合わせ、などが考えられます。
誰もが抱えている一般的な問題から始めるのであれば、まずは情報セキュリティに取り組むことになるでしょう。
データアジリティがあれば、考え得る情報セキュリティポリシーを検証可能な形で即座に実装できます。もっと大きな視点で考えると、優れた情報セキュリティにおいては、ファクトの意味を迅速かつ確実に解釈する能力が求められます。また、すぐに行動に移せることも必要です。
もう一つ上のレベルには、データウェアハウス、マート、シェア、レポーティングシステムなどの広大な風景があります。ここにはファクトがありますが、それらは何を意味するのでしょうか。データアジリティがあれば、共有されたファクトおよび各ユーザーにとっての意味に対して、個別の「レンズ」(見方)を素早く構築できます。
次のターゲットとして最適なのは、おそらく最近投資が急増している分析ツールやプラットフォームの分野でしょう。繰り返しになりますが、分析の対象となるファクトは大量にあります。しかしコンテキスト内でのこれらのファクトの意味を、共有され信頼される方法で理解することは困難なのです。
各業種を見ても、魅力的なユースケース(やれること)はたくさんあります。
また、情報を即座に解釈しすぐにアクションを取らなければならないものは、常に有力なユースケース候補です。
また、製品やサービスを支える組織的知識も、有力な候補です。
これらは一緒になっていることがよくあります。
例としては、情報機関、セキュリティ、不正などの脅威に対応する部門、また金融サービス、ライフサイエンス、航空宇宙など、イノベーションとリスクのバランスが求められる分野などがあります。
ファクトおよびその意味の解釈を改善したい組織は、民間・公共を問わず大量にあります。彼らは、情報の解釈方法およびそれに基づくアクションをシンプルかつ強力に変更できる能力を求めています。
つまり、データアジリティを求めているのです。
大組織で仕事をしたことがある人なら、「うまくいくこと」と「うまくいかないこと」があるのがわかるでしょう。
人々は「うまくいかないこと」ではなく「うまくいくこと」の方に時間を使いたいと考えます。
なかには「もっといいやり方があるのでは」と感じるものもあるでしょう。このようなものはいろいろ問題があるので、とりあえず現時点では「うまくいかないこと」に分類されてしまいます。
既存のシステムの周りに「ソリューション」を組み込もうとしただけでは、問題が減ることもありません。
歴史的に見ると、ほとんどの場合、この新しいモデル(=セマンティックデータプラットフォーム)は、重要なユースケースにおいて他のすべての試みが失敗した後に採用されています。そこでは、アクティブなデータ、メタデータ、意味を一緒にしておくことで、驚くほど短時間で結果を出すことができます。
これを人々が認識し、感動するのです。そして、そこから次のユースケース、さらに次のユースケースと続いていくことになります。しばらくすると、組織的知識を集めて再利用し新しいビジネスプロセスを作り出そうとする、さまざまな業務部門やグループで採用されます。その結果、デジタルファクトおよびその意味を簡単に共有できるようになります。
情報管理および知識共有の新しいパターンが、古いパターンに取って代わり始めます。根本的な問題がなくなったことで、新しいことが可能になったのです。
これはテクノロジーに関する話だと思う人もいるかもしれません。つまり、データとそのさまざまな解釈の両方を管理するためのより良い方法についての話だと。しかし、これはリーダーシップの話でもあります。つまり、どんな組織においてもファクトおよびその意味を管理するためのより良い方法が必要だということです。
もしあなたが現代のデジタルビジネスモデル形成の最前線にいるならば、新しいやり方を知りたいと思うでしょう。
ここまで、ファクトおよびその意味の重要性について話してきました。データアジリティは、アクティブなデータ、アクティブなメタデータ、そしてアクティブな意味を結びつけることで生まれます。「データアジリティ」とは、情報の解釈方法およびそれに基づくアクションを、シンプルでパワフルに、かつ即座に変えられる能力のことです。
データアジリティは、どんな場合でも常に重要なことは同じですが、それぞれ「どの程度重要なのか」という点は異なっています。データに関する知識を共有することは有用なので、水平方向にも垂直方向にも強力に展開できます。
この結果、アーリーアダプターたちは、他の人たちとは全く異なる新しい方法で情報を管理するようになっています。
この新しい手法は、「データセントリック」に対して「ナレッジセントリック」と呼べるでしょう。ここでは、場合によっては、情報そのものよりも情報について知っていることの方が大切だと思われることすらあります。
今後のブログでは、セマンティックデータベースプラットフォームの内部構造について、また、一般的なデータ、メタデータ、セマンティックツールとの根本的な違いについて取り上げていきます。そこでは見慣れたコンセプトが、新しい形で使われているのがわかるでしょう。
また、組織的なインパクトや、教訓についても取り上げます。組織に新しいやり方を導入するときは、いつも大変な作業が必要となりますが。
最後に、現在および将来のデジタルビジネスモデルにおける輝かしい可能性について取り上げます。これは深い探求に値するものです。
ホワイトペーパー「セマンティックナレッジグラフによるデータアジリティ」をダウンロードする。
ジェレミー・ベントレーは、Semaphoreの創設者でセマンティックAIプラットフォーム「Semaphore」を開発しました。今回のSemaphoreの買収に伴いMarkLogicの一員となっています。ジェレミー自身もエンジニアであり、エンタープライズ情報管理に関する問題を解決することにキャリアの大半を費やしてきました。現在は、Semaphoreのモデリング、自動分類、テキスト分析、視覚化機能を使用して新しい製品を開発するイノベーターたちをクライアントとしています。そうしたクライアントの業種はさまざまで、金融、出版、石油・ガス、政府、ライフサイエンスなど多岐に及んでいます。彼らはみな、情報資産への依存度が高く、それらを収益化、管理、統一化する必要性があるという点で共通しています。Semaphore入社以前は、ニューヨークのフィンテック企業であるマイクロバンク・ソフトウェア(サンガード・データ・システムズによって買収)でマネージングディレクターを務めていました。エディンバラ大学で機械工学の学士(成績優秀者)を取得しています。
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