ブロックチェーンは、金融業界に銀行が必要でなくなる全く新しい世界への扉を開きます。
ブロックチェーン技術がビジネスのさまざまな分野に広がり始め、ブロックチェーンが何なのかを理解しようとする人々が増えてきています。しかし、一般の人々が詳細を理解することなく使えるほどシンプルになるまでは謎めいている新技術の常として、結局よくわからないと思う人も多いようです。
この新興技術をより深く理解するため、筆者は、Protinuum の創始者であり、ブロックチェーン技術に関して豊富な知識を持つ Scott Foote 氏の話を聞きました。ここでは、金融業界に焦点を当てて、ブロックチェーンの仕組み、金融業界への影響、一般的な使用への道筋の3つのポイントを説明します。
新しい概念はよく知っているものになぞらえて説明すると理解しやすいものです。Foote 氏は、まず、ブロックチェーンをデジタルコミュニティに分散された元帳にたとえました。元帳は、財務勘定と取引を手作業で記録して作成します。一般に、ある特定の場所に保管され、銀行、顧客、会計士といった、限定された少数のユーザーのみがアクセスできます。
分散元帳の場合、コミュニティ内の全員がトランザクションがいつ発生するかを知ることができます。取引記録は、家庭用サーバーも業務用サーバーも含め、数万台のコンピューターに保管されます。この可視性のために、コミュニティは適切な金額の取引が発生したことに同意(または不同意)しなければなりません。「全員がトランザクションを見るので、全員がトランザクションが有効であることに同意しなければなりません。同意が得られない場合は、トランザクションは無効です。」と Foote 氏は話します。不一致で承認されない可能性があるということは、参加者間の信頼と誠実さが必要であるということです。
ブロックチェーンのコミュニティで発生するトランザクションは、(電子メールにファイルを添付した場合のような)交換されたファイルのコピーではありません。代わりに、トランザクションの参加者は単一のオリジナル・コピーの所有権をやりとりします。別のコピーではなく、オリジナル・コピーであることは、どうすれば確認できるでしょうか?ブロックチェーン上で交換される各ファイルは暗号で署名されます。つまり、受信者がオリジナル・コピーの新しい所有者になることを保証するために暗号化されます。
ブロックチェーンはデジタルコミュニティで仮想通貨を使用します。仮想通貨は、ピアツーピア・ネットワークで写真や歌などのソフト・プロダクトの所有権の取引に使われます。ビットコインが有名ですが、ブロックチェーン・コミュニティによっては、異なる仮想通貨を使用します。簡単にするために、ここでは一貫してビットコインを例として使うことにします。ブロックチェーン・コミュニティのメンバーは、ビットコインを格納するアカウントを所有します。このアカウントは銀行口座に似ていますが、各アカウントには独自の取引のみを個別に管理するための長い秘密のコードがあります。
一般の金銭取引とは異なり、取引が発生しても、実際のビットコインは移動しません。その代わり、交換されるビットコインとソフト・プロダクトの所有権が変更されます。ある特定の価値を持ったビットコインが交換された後は、元の所有者はその値について何の権限もなく、新しい所有者がそれを使って何を行うかについても一切コントロールできません。オリジナルのコピーの有効性は前述の暗号化によって保証されます。ブロックチェーン以前にはソフト・プロダクトの所有権と真正性を識別する方法がなかったこともあり、詳細については今後変容していくかもしれません。
ブロックチェーンで仮想通貨を利用するにはどうすればいいでしょうか? 「ほとんどの銀行はブロックチェーンのアカウントを持っています。銀行に行って、100ドル分のビットコインが欲しいと言えばいいのです。ビットコインIDを提示して支払いをすれば、アカウントに100ドル相当のビットコインをトランスファーしてくれます。」と Foote 氏は説明します。ビットコインの価値は、他の通貨と同様に変化しますが、一般的にどれくらい取引できるかという基準によって変動します。Foote 氏は、最も重要なことは、「ビットコインの状況を確認するのに銀行に行く必要はありません。メンバーになっているブロックチェーンに行けばいいのです。ブロックチェーンが新しい仲介者です。」と強調します。
ブロックチェーンが銀行にどのような影響を与えるかの概要を理解するには、図書館のカードファイルについて考えるとわかりやすいかもしれません。図書館は、図書がどこに保管され移動したかをカードファイルに記録して集中的に管理します。ブロックチェーンは、ファイルの移動を追跡するため、同様のサービスを提供します。図書館は、インターネット上の書籍のソフトコピーへのアクセスの容易さに伴って時代遅れになってきて、インターネットのために主要機能の見直しが迫られている形です。一方、ブロックチェーン技術は、インターネットを利用して成り立っています。
金融の世界に話しを戻すと、銀行は図書館と同様に中央仲介機関として機能しますが、対象が金融取引になります。銀行は、現金を保管し、トランザクションを追跡し、その他の追加サービス(クレジットカード、ローンの統合、信用調査など)を提供します。Foote 氏によると、ブロックチェーンは、「中央の権威を必要とするコミュニティの概念全体を覆す」ことによって、仲介者の必要性をなくすと述べています。ブロックチェーンは、メンバーが銀行を経由することなく、すぐに金銭トランザクションを完了することができるコミュニティを作り上げます。中央の権威が金銭取引をコントロールするという考え方に一石を投じます。
ブロックチェーン技術を使えば、独自の元帳を自分で管理できます。各ブロックチェーン・コミュニティ内の可視性と暗号化によって、信用介入なしに、メンバー同士のデジタル・トランザクションが可能になります。通常は金銭トランザクションの両サイドが、銀行という信用保証機関を媒介にすることで、信頼できるトランザクションが成立します。ブロックチェーン技術が信頼に値するものであれば、信用保証機関の媒介が不要になります。
ブロックチェーンは銀行の既存のサービス業務に対する脅威になり得ますが、現在のサービスを調整してブロックチェーンを使用する顧客の新しいニーズに対応することは可能です。銀行は、顧客が面倒な金融取引のオーバーヘッドがあると判断したときにより優れたサービスを提供する、再仲介プラットフォームの可能性を模索しています。社会は現在、権威機関の介入を避けたがる方向に向かっているので、容易なことではありませんが、銀行はブロックチェーン技術がもたらす脅威を認識しており、すでに行動を起こしています。Foote 氏は、「銀行はより多くのサービスを提供する必要があります。それを怠ると(金融業界から)完全に遮断されてしまうでしょう。」と述べました。
世界銀行は、経済学者のロザンナ・チャン女史を世界銀行ブロックチェーン・グループの長に任命しました。世界銀行ブロックチェーン・グループは現在およそ60人のメンバーを擁し、世界規模でどのようなブロックチェーン・ソリューションが可能かを研究しています。2017年4月現在、 世界の75の銀行(バンク・オブ・アメリカを含む)が、リップル、「サービスとしてのブロックチェーン」コミュニティ、と契約しています。これは、銀行がオーバーヘッドに対するサービスを提供することを可能にすることを意味します。
2017年5月に、フィデリティは、ブロックチェーンを利用する顧客に対して特定のサービスをサポートするために、デジタル資産交換会社 Coinbase を統合することを発表しました。これまでのサービスに類似したサービスを、より低コストで提供することを目指します。銀行がこれまでの経験と蓄積を活かすことができる他の領域として、取引の維持と保険があります。ブロックチェーンの主な懸案事項は、デジタル元帳に保管されている金銭に対する連邦保険が十分でないことです。特定のブロックチェーンのエコシステムを支援し、その利用者に保険を提供することは、銀行にとって検討することが可能なサービスでしょう。
現在のところ、ブロックチェーンという言葉は、ランサムウェアの文脈で聞かれることがほとんどです。そのため、ブロックチェーンは違法だと誤解されがちです。ですが、ブロックチェーンは犯罪者だけのものではありません。ブロックチェーン技術は現在、商品の移動を中心として大規模な機関によっても使用されています。ただ、この使用法は抽象的で、多くの人にはあまり関係がなさそうです。ブロックチェーンが一般に受け入れられるためには、技術を理解していなくても使えるよう、ブロックチェーンをシンプルなものにする必要があります。使用が簡単になれば、ブロックチェーンはもう1つのデジタルウォレットになり得ます。
ブロックチェーン技術は、金融業界にとって否定できない脅威をもたらしますが、銀行は退却してはいません。新しいサービスを開発し、デジタル世界の中にも関連性を確保できるような解決策を研究しています。
ブロックチェーンに関する知識と経験により、複雑な概念を簡単に理解できるようご協力下さった Scott Foote 氏に感謝の意を表します。
Kathleen is a Junior at Wake Forest University studying Psychology and Sociology. She has a passion for writing and a love for learning. Kathleen is excited to explore the IT world and fine tune her writing skills along the way.
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